以下には、主にマイグレーション処理後の深度断面を基に、浅層反射法地震探査測線の解析断面に認められる記録の状態及び反射面の分布形状について記述する。
@記録の状態
図3−30の深度断面図では、記録の状態は始点側(北西側)の距離程600m付近までと、これより終点側(南東側)では大きく異なっている。距離程600m付近から終点側の範囲では比較的記録が良く、明瞭な反射面が深度600m付近まで認められる。一方、これより始点側の範囲では記録の状態が全般に悪く、反射面がほとんど確認できないゾーンがかなり広がっている。
このような記録の状況に対し、ノイズレベル自体は測線の始点側と終点側で大きく異なるようなことはなく、通行車両以外の工場等の人工的ノイズはむしろ終点側の方が大きかった。また、測定時には距離程600m付近を境として、ミニバイブロによる起振の伝播状況が急激に好転する状況が認められた。
したがって、上記のような記録の不良の原因としては、この測線の始点から距離程600mまでの範囲では、地表下浅所に地震波の減衰が高い地盤が分布していたということが最も可能性が高いと考えられる。詳細は不明であるが、測線下に埋設管が敷設されていないことは確認したことから、路床が軟弱な盛土から構成されていたのではないかと推定される。
A反射面の分布形状
深度断面図では、始点側(北西側)の距離程600m付近までは、反射面が不明瞭なゾーンが広がっているが、距離程300m前後で部分的に得られた反射面からは、10度以下の傾斜で北西に緩く傾く地層構造が読み取れる。
一方、距離程800m付近から終点側(南東側)では、幅300m前後にわたり地層が南東方に急傾斜する状況が明確に認められる。これに対し、距離程1000m付近から終点側では、反射面はほぼ水平で、注目されるような地質構造は全く認められない。
以上のような状況からは、距離程800m前後に見られる急傾斜の反射面が新第三紀層の撓曲構造を示していると判断される。この位置は、空中写真の判読及び地表踏査の結果見られた矢田川累層の撓曲の東端に当たり、地形・地質の状況と整合している。
また、距離程800m前後から終点側の表層部には、あまり明瞭な反射面をもたない地層が分布している。反射の状況からはこの部分は粗粒の堆積物と推定され、地表の状況からは主に段丘堆積物に対応すると考えられる。
図3−27 浅層反射法地震探査時間断面図(マイグレーション処理前)
図3−28 浅層反射法地震探査時間断面図(マイグレーション処理後)
図3−29 浅層反射法地震探査深度断面図(マイグレーション処理前)
図3−30 浅層反射法地震探査深度断面図(マイグレーション処理後)