浅層反射法により撓曲に伴う断層の存在が明らかになり、撓曲構造の西側の大田川沿いに中位段丘面を切る断層が推定された。また、この段丘面を切ると推定される断層の位置で極浅層反射法を実施したところ、測線に断層が検出された。
従来加木屋断層の南部は、阿久比町東部へ続くと考えられていたため、その連続性を確認する目的で、阿久比町北部で浅層反射法のC測線で探査した。その結果、常滑層群(340万年以前に形成された地層)を切る断層は認められたが、沖積層(最近1万年間に形成された地層)を切る断層は認められなかった。また、他の測線で断層の傾斜が70゚〜80゚とやや傾斜しているのに対し、この断層の傾斜はほぼ鉛直であるため、別の断層である可能性が高い。
地形(河川の形状)や加木屋層(50万年前以前に形成された地層)の走向・傾斜からは、加木屋断層の南部は、阿久比撓曲に延長すると考えられる。従来の阿久比東部の断層(浅層反射法C測線の断層、尾根の連続では阿久比川を横断し南東に続く)は別の断層と考えられる。
この加木屋断層の一部とされていた阿久比東部の断層を、新たに阿久比東部撓曲と仮称する。また、その延長は約3.5qとなる。なお、加木屋層の分布状況からは、阿久比東部撓曲は、この数10万年間に明瞭な活動はない。
表7−6−4 各時代の変位量(加木屋断層)
A阿久比撓曲
空中写真の判読では、常滑層群の構造から考えられている加木屋撓曲と阿久比撓曲の間にも変位地形が観察され、阿久比撓曲の南部(阿久比町の椋岡から半田市の東郷町の間)中位段丘面にも変形地形が認められる(この間は段丘層に覆われ常滑層群は露出していない)。また、加木屋層の変位量から、平均変位速度は0.04m/千年と、加木屋断層と同じ値が得られた(表7−6−4、表7−6−5参照)。さらに、浅層反射法D測線や極浅層反射法で断層が検出された。
これらのことから、中位段丘面を変形させている断層は加木屋断層と阿久比撓曲は同じ断層であり、半田市南部の成岩まで連続すると考えられる。
表7−6−5 各時代の変位量(阿久比撓曲)
B加木屋断層と阿久比撓曲の連続性
前述のように、空中写真判読、地表踏査及び極浅層反射法の結果から、加木屋断層と阿久比撓曲が連続している可能性が高いことが判明した。
そこで、この断層を新たに加木屋−成岩断層と仮称する。その延長は、約30qに達する。この全延長が一度に動く場合を想定すると、平均活動間隔は2万年、地震の規模はマグニチュードM7級となる(表7−6−6参照)。また、沖積層を切る低断層崖が認められなかったため、1回の地震による変位量は求められなかった。ただし、断層の一部が動いた場合には、地震規模は小さく、活動間隔も短くなる。
加木屋−成岩断層については、活動度は高くないため、地震発生の可能性は一般的には高くないと考えられる。ただし、この断層沿いには最近活動した証拠は得られておらず、トレンチ調査の適地もないために、現状の科学技術水準ではこれ以上、将来の地震発生予測を厳密に行うことは不可能である。
表7−6−6 加木屋−成岩断層の平均活動間隔及び地震規模