大高−大府断層沿いにおいては、北北西−南南東方向に連なる丘陵が、常滑層群の撓曲構造を反映しており、その基部において段丘面も撓曲構造に調和的に変形している。常滑層群の変位量は、最大に見積もって２００ｍに達する。

境川の右岸を南−北に連なる丘陵の尾根が、常滑層群の撓曲構造を反映していると考えられる。

境川とその西側の丘陵地帯との境界部に分布する段丘面を、１〜２ｍ東側が低下するように変位させている小崖が連続しており、このことは都市圏活断層図にも示されている。

さらに、今回新たに東浦町北部〜大府市南部の森岡地区においても沖積低地面を変位させ、東側が低下している低断層崖が観察された。このような沖積低地面を切る低断層崖が認められたのは、今回の調査地域では、以上の２地区だけであった。

�A既存ボーリング

大高−大府断層を直接横断する既存ボーリング（日本道路公団第二東海自動車道）は、５０ｍから１００ｍ間隔で実施されているため、断層位置を明確に判定することにやや難があるが、都市圏活断層図などの資料によれば、断層推定位置を挟んで地形面や地層のずれが推定されている。

�B極浅層反射法

＜ａ、ｂ−測線＞大府市月見町

森岡地区で認められた小崖の北側延長には、空中写真の判読によって沖積低地面に１ｍ程度の低崖が認められた。この低崖が活断層に伴う変位地形である可能性があったため、極浅層反射法を実施した。

Ａ測線においては、弾性波の特性が異なるＰ波とＳ波の二通りの探査を実施した結果、それぞれの崖の下の、常滑層群を明瞭に切断する傾斜８０ﾟ〜９０ﾟの断層が確認できた。沖積層の厚さは数ｍと薄いため、極浅層反射法の記録からは断層が沖積層を切断しているか確実に判読することはできなかった（図７−５−１上段図、下段図参照）。

＜ｃ−測線＞大府市江端町

断層の北方への連続性を確認する目的で、断層の存在が推定される位置で極浅層反射法を実施した。

その結果、地層の切断は直接には確認できなかったが、測線の西端で常滑層群内の反射面が急傾斜しているため、測線のすぐ西端に断層の存在が推定できる（図７−５−２参照）。

�C浅掘ボーリング結果（深度１０〜３０ｍ）

極浅層反射法によって、低断層崖の位置に地層の不連続面（断層）が検出されたため、断層変位を受けている地層の層位を確認する目的で浅掘ボーリングを実施した。

ボーリングの結果、推定断層（空中写真判読及び極浅層反射法）の位置での沖積層及び地表面が約１ｍ近く変位していることが明らかになった。この沖積層は、^１４Ｃ年代測定結果より２５００年前程度の堆積物と推定できる（図７−５−１中段図参照）。

�Dトレンチ調査

空中写真判読の結果、森岡地区で比高１ｍ以下の低崖が数本認められ、その変位量は合計１．５ｍである。このため、この低崖は活断層の可能性が考えられたが、用地上の制約のため、この低崖の北側延長部でトレンチ調査を実施した。トレンチ地点での７本の既存ボーリング結果によると、常滑層群の上面（完新世基底面）の標高が、低崖の両側で２．４ｍ異なることが明らかになった（図７−５−３、図７−５−４、図７−５−５参照）。

トレンチ調査は、用地の関係で深度２．５ｍまでしか確認できなかった。トレンチ調査を行った結果、盛土及び完新統の砂及び粘土（河川の氾濫原堆積物）が分布していたが、断層により変形した形跡は全く認められなかった。

トレンチ壁面から採取した木片の^１４Ｃ年代測定結果は、１３０〜１４０±５０年前を示していること、トレンチ壁面の地層はほとんど乱れていないことにより、トレンチ地点付近に存在する活断層は、最近１００年間は活動していないことが確認できた。

さらに、トレンチの西側やトレンチ底面深度以深の地質を観察する目的で、トレンチ付近で３本のボーリングを密に行った。その結果、トレンチ地点における東−西方向の地質断面を図７−５−５のとおり推定した。

今回のトレンチで断層が確認できなかったが、その理由は、トレンチ掘削地点において、完新統の河川堆積物が常滑層群の断層を覆い隠していたためと考えられる（図７−５−５参照）。つまり、トレンチ用地として、最適地ではない低断層崖の延長上の用地しか確保できず、この用地が狭いため、断層を確認するために必要な深度まで掘削できなかったものと推定できる。

しかし、トレンチ付近で行ったボーリング調査のコアから採取した沖積層の細砂層中の木片からは、約２５００年前の^１４Ｃ年代測定結果が得られた。この結果は、トレンチ地点北側（大府市月見町）のボーリングで採取した木片の年代と同じであり、この地点の南方で複数の低断層崖を伴う変形を受けている沖積層の年代と同程度のものと考えられる。