A測線では、探査測線近傍において3本のボーリング調査を行っている。断面内には沖積層、常滑層群及び師崎層群が分布する。沖積層は測線距離1100mより東側の表層に薄く分布する。それより西側では、表層から常滑層群が分布する。
常滑層群は、距離1100m付近を境にその構造が大きく変化している。距離1100m付近より東側では、反射面の形状からほぼ水平又は若干西側に傾斜した単斜構造を示している。一方、距離1100m付近より西側では、反射面は不鮮明ながら、高角度(約45度)で東側に傾斜した構造を示している。ボーリング調査(No.2)の結果でも、層理面が約45度傾斜していることが確認された。また、距離100〜400m付近では反射面は逆に西側に傾斜しており、距離400m付近には背斜軸が推定される。さらに、地質構造が変わる距離1100m付近には断層が推定され、当初想定されていた加木屋断層に相当すると考えられる。
師崎層群は、常滑層群の下位に分布するが、本業務においてはボーリング調査などによっては確認されていない。しかし大府市で行われた深度1500mのボーリング調査等を参考にして、距離1100mより東の深度330m付近に位置する明瞭な反射面が師崎層群の最上部に相当すると判断した。
A測線においては、従来から加木屋断層が分布することが地形などから推定されていたが、その正確な位置ははっきりしていなかった。今回行った物理探査によって、断層が測線距離1100m付近に位置することが推察され、また断層の西側で地層が大きく傾斜していることが確認された。
AB測線(図7−1−2参照)
断面内には沖積層、洪積層、常滑層群及び師崎層群が分布する。沖積層は、既存のボーリング調査などから、表層部に極薄く(1〜3m程度)分布している。
洪積層は、測線の起点側で層厚が5m程度であるが、終点側に向かって徐々に厚くなり、測線の終点付近では、30〜50m程度の層厚となる。
常滑層群は、ほぼ水平あるいは若干南東側に傾斜した構造を示している。また、断層等に起因するような反射面の不連続や変位は確認されなかった。
常滑層群の下位に分布する師崎層群は、大府市で行われた深度1500mのボーリング調査等を参考にして、距離400mで深度480m付近に位置する連続した反射面を師崎層群の最上部に相当すると判断した。明瞭な反射面から推察すると、師崎層群は常滑層群同様ほぼ水平あるいは若干南東側に傾斜した構造を示している。
また、全体的には下位の地層ほど傾斜が大きくなる傾向があり、地層の変形が累積されていることが伺える。
B測線においては、高根山撓曲が分布すると考えていたが、物理探査結果では、地層はほぼ水平で断層は確認されなかった。浅層反射法弾性波探査の分解能を考慮すると、変位量10m程度の断層が分布していないとは言い切れない。また、測線のさらに北側に活断層が分布する可能性も考えられる。
BC測線(図7−1−3参照)
C測線では、探査測線近傍において、3本のボーリング調査を行っている。断面内には沖積層、常滑層群及び師崎層群が分布する。沖積層は測線全域にわたり表層に薄く分布する。
常滑層群は、距離1100m付近を境にその構造が大きく変化している。距離1100m付近より東側では、反射面の形状からほぼ水平な層構造を示している。一方、距離1100m付近より西側では、反射面の形状から距離850m付近に背斜軸、距離300m付近には向斜軸が推定され、常滑層群の褶曲構造が認められる。ボーリングNo1では、層理面の傾斜が10度程度認められた。、距離1100m付近では、その両側で地質構造が変わり断層が推定される。
常滑層群の下位に分布する師崎層群は、距離300mの深度500m付近に位置する明瞭な反射面が師崎層群の最上部に相当すると判断した。反射面の形状から師崎層群も常滑層群と同様な構造を示していると考えられる。
C測線においては、従来は断層の存在がはっきりとわからなかったが、今回行った物理探査によって、断層が測線距離1100m付近に位置することが推察され、また、断層の西側で常滑層群の褶曲構造が確認できた。
CD測線(図7−1−4)
D測線では、探査測線近傍において2本のボーリング調査を行っている。断面内には沖積層、洪積層、常滑層群及び師崎層群が分布する。沖積層は測線全域にわたり表層に数mの厚さで分布するが、距離800m付近から東側では、10〜20m程度とやや厚くなる。また、洪積層は、距離700mより東側の深度50m以浅に分布する。
常滑層群は、明瞭な反射面の状況からほぼ水平又は若干東に傾斜した構造を示す。また、距離200m付近には小規模な背斜構造が認められた。
常滑層群の下位に分布する師崎層群は、距離800mの深度470m付近に位置する反射面が師崎層群の最上部に相当すると判断した。本層は、距離700m付近を境にやや層の傾斜が異なり、西側は若干東側に傾斜しているが、東側はほぼ水平な構造を示している。 距離700m〜800m付近では常滑層群、師崎層群ともやや反射面が不鮮明になっているが、その両側における反射面の連続性は良いが、距離700〜800付近には常滑層群の地層が乱れ、一部切れている。この地層の乱れが断層の可能性がある。
D測線は、阿久比撓曲の南延長部にあたり、空中写真判読や地形などから活断層が推定されていた。
・E測線(図7−1−5)
E測線では、探査測線近傍において2本のボーリング調査を行っている。断面内には沖積層、碧海層、常滑層群及び師崎層群が分布する。沖積層は測線距離200m付近より東側の表層に薄く分布する。それより西側では、表層から碧海層が分布する。
碧海層は、測線の起点側で表層から層厚10〜20m程度で分布するが、距離200m付近より終点側に向かって厚くなり、50〜70m程度の層厚と推定される。
常滑層群は、明瞭な反射面から推察するとほぼ水平な層構造を示している。また、距離250m付近より西側では反射面が不鮮明となっているが、地層の乱れが認められる。地形判読などや地層の乱れを参考にして距離250m付近に断層を推定した。
常滑層群の下位に分布する師崎層群は、距離500mの深度450m付近に位置する明瞭な反射面が師崎層群の最上部に相当すると判断した。本層は、全体的に若干西側に傾斜した構造を示しており、やや常滑層群と層の傾斜が異なっている。また、距離150m付近から東側では反射面が連続しており、断層などに起因する不連続や乱れは認められない。したがって、上位の常滑層群等から想定された断層は、距離150m付近よりさらに西側に想定される。その場合、距離250mに想定した断層の傾斜は、西に80度となる。
E測線においては、従来から高浜撓曲崖が分布することが地形などから推定されていたが、その正確な位置ははっきりしていなかった。今回行った物理探査と地形判読等により、断層が測線距離250m付近に位置することがわかった。