@測定原理
成層圏で窒素原子と中性子の原子核反応によって生じた放射性炭素は、炭酸ガスとして対流圏に入り、大部分は直接大洋に溶け込むが一部は光合成を通じて植物体内に入り、食物連鎖を通して広く生物圏に広がる。生物体の生命活動が停止すると新たな放射性炭素の補給は行われず、放射性炭素は5,730年の半減期で減衰していく(初期の測定値と整合性を保つため、5,568年が用いられている)。したがって、放射性炭素の残存量を調べることによって、生物体の生命活動が停止した年代が推定される。
14C年代測定法は、試料をメチレンなどの気体にしてガス比例計数管(GPC)で測定する。Β線計数法では、測定時間内に新たに壊変した放射性炭素の量から放射性炭素の残存量を推定する。
壊変定数を用いた年代測定では、指標核種(14C)の初期量(CO),壊変量(CO−Ct),現在量(Ct)のうち2つの量を測定し、壊変定数(λ)を用いて年代(A)を算出する。一般に初期量の一部は壊変して減少しているから、実際の測定は、壊変量(CO−Ct)と現在量(Ct)について行うことになる。
年代を算出する一般的な式は、式2−6−2−1で示される。
壊変定数(λ)と半減期(T1/2)の関係は、CtがCoの1/2になるときの年代(A)がT1/2であるから,T1/2・λ=ln2=0.6931である。
[指標核種] 放射性炭素(14C), [壊変定数] λ=1.22×10−3/年
[壊変生成核種] (窒素) [半減期] T1/2=5568年
[測定可能年代範囲] 0〜3×104年(GPC),(閉鎖系、減衰法、破壊法)
0〜6×104年(AMS)
[測定方法・機器] ガス比例計数管(GPC),加速器質量分析計(AMS)
[測定対象試料] 生物遺体
[測定される年代の意味] 生物体の死滅した時期
14C法は、炭素の放射性同位体14Cが5570年の半減期でβ−壊変して、より安定な14Nに変化することを利用するものである。自然界では、大気中・海水中の14C濃度が過去・現在を通じて一定であったとすれば、生物の有機物や骨格中の14C濃度も一定と考えられる。生物が死ぬと、大気や海水との物質交換がなくなり、生物遺体中の14C濃度は放射壊変により時とともに減少していく。したがって、過去の生物遺体の14C濃度から、その生物が生きていた時代が算出できる。ただし、1954年以降の核爆発実験によって生産された14Cの増加といった原因で、現在の大気中の14C濃度は増加している。このため14C法においては、基点を1950年において1950年より何年前かを示す(BPと表わす)。
測定は、サンゴや貝といった炭酸塩は塩酸と反応させ、木や炭その他の有機物は酸素気流中で燃料させて、試料中の炭素をCO2として取り出す。このCO2をアセチレンに変え、比例係数管に封入し、14Cの壊変によるβ線を計数する。14Cの半減期が比較的短いので、古い時代の試料では14C濃度が小さく、計測中に壊変する数が少なく、年代測定はできない。通常は 3.5〜4 万年程度が限界である。
A試料の前処理および調整
14C年代測定用試料は、他の炭素が混入しないように、アルミホイールでくるんで保管し、試験に供した。測定する前に試料の前処理および調整を行う。
前処理は、不純物の量により、酸やアルカリを用いて洗浄を行ったあと、ガス比例計数管(GPC)では炭素をベンゼンに、加速器質量分析計の場合は炭素を石墨に調整する。
測定値は、現在(AD1950年)から何年前(y.B.P.)かを算出した年代を示すが、炭素の安定同位体比(13C/12C)を測定して測定値を補正する。
さらに今回測定をおこなった米国ペンシルベニア大学では、年代既知の樹木年輪の14Cの値から補正曲線を作成し、暦年代を求めている。