3種類の探査の結果、本調査地にはいわゆる音波散乱層が至る所に分布していることがわかり、地下構造は部分的にしか推定できなかった。深部構造把握のために実施したエアガンによる探査においてもなお散乱層による影響が大きかったこと、ならびに水深が浅すぎてこれ以上エネルギーの大きい震源を用いることが難しい状況からみて、当地で音波探査によりさらに信頼度の高い構造探査を行うことは困難と言わざるを得ない。
図3−3−4、図3−3−5、図3−3−6、図3−3−7に表層探査記録断面図、図3−3−8、図3−3−9にシングルチャンネル探査記録断面図、マルチチャンネル探査記録断面図を示す。さらに、図3−3−10に、3種類の探査結果および測深結果をもとに作成した解釈断面図を示す。同図において、海底表層付近から深度30m程度までの堆積構造については主にシングルチャンネル探査結果を用いている。
シングルチャンネル探査記録を見ると、地層構造は海底表層付近のほぼ水平な反射面を持つ層と、その下のやや起伏のある層の2層に大きく分けられる。既往ボーリング資料等を参考にすると、表層付近の層は沖積堆積物に相当し、下位層は第三紀層あるいは洪積土層に相当するものと推定される。第三紀層と洪積土層との境界は不明である。
一方、マルチチャンネル探査結果を見ると、一部に深度300m程度からの反射面が認められるが、やはり散乱層の影響でその連続性は不明であり、また特に上流側では全くわからない。また、表層探査結果を見ると、一部で海底表層付近の堆積状況が把握できるものの、それ以外ではほとんど情報が得られていない。
2)断層の有無について
探査記録全体を概観して明瞭に断層と推定できる箇所は見当たらないが、======= に示すようにシングルチャンネル探査記録における反射イベントの不連続等に着目して断層の可能性のある箇所を抽出すると、次のようになる。
A) 測点No.12.3付近およびNo.12.8付近
測点No.12.3〜No.12.8の範囲は、この部分だけ深度20m前後から下が色が真っ白く抜 けており、明らかに周辺の構造とは異なる様相を呈している。また、表層部の反射面の 連続性から類推すると、この範囲の部分が周囲に比べて盛り上がった形状を示している。 反射イベントにも段差が生じており断層の可能性がある。
B) 測点No.13.8付近
この付近を境にして、表層堆積層の下位の反射イベントに2〜3m程度の段差が生じており、小規模な断層の可能性もある。
C) 測点No.15.5〜No.16付近
この部分を境にして反射面の様相が全く異なっている。すなわち、下流側ではさらに 下流に向かって傾斜した層理面が何本も認められる構造になっているのに対して、上流 側では表層付近にほぼ水平成層的に反射面が連続するが、深部構造ははっきりしない。 この理由としては、実際に地質が異なっているか、あるいは上流側で表層付近に比較的 堅い地質が分布していてその下位の地層からの反射イベントが得られていないかのどち らかと考えられる。