音波探査は、大高ー大府断層の南方延長部を対象として、地質構造ならびに断層の有無・位置等を把握する目的で実施した。
2)測線の位置及び測線数量
図3−3−1に、音波探査測線図を示す。同図に示すように、測線は衣浦港の河川流域沿い に1測線配置し、測線長は8,700mとした。
3)探査の概要
探査方法としては、次の3種類の探査を同一測線で実施した。
A)表層探査:海底下20〜30mまでの構造を把握する。
B)シングルチャンネル音波探査:海底下100m程度までの構造を把握する。
C)マルチチャンネル音波探査:海底下200〜300mまでの構造を把握する。
表3−3−1に使用した探査機器を示し、図3−3−2に音波探査状況図を示す。また、表3−3−2 に、探査仕様をまとめて示す。
表3−3−1 音波探査使用機器
図3−3−2 音波探査状況図
表3−3−2 音波探査仕様
・測深
音波探査と同時に音響測深機を用いて測線沿いに水深を計測した。測深に当たっての 水深の基準面はT.P.(東京湾中等潮位面)とし、河川流域沿いの標高既知の点において 潮位観測を行って潮位補正を行った。表3−3−3に、音響測深機の仕様を示す。
表3−3−3 音響測深機の仕様
・測位
調査時にはディファレンシャルGPS測位機を調査船に搭載して、逐次位置を把握し ながら所定測線に船を誘導した。表3−3−4に、測位機の仕様を示す。
表3−3−4 測位機の仕様
4)解析方法
A) 表層探査・シングルチャンネル音波探査解析方法
表層探査およびシングルチャンネル音波探査によって得られた記録は時間断面図である。解析に当たっては地盤の音波速度を 1500m/secと仮定して深度断面に変換し、反射面の連続性に着目して地層構造の解釈を行った。
B) マルチチャンネル音波探査解析方法
図3−3−3に、マルチチャンネル音波探査データの解析処理のフローを示す。別冊資料に解析処理例を示し、以下に各処理の概要を記す。
○ジオメトリー作成
データ処理のために、発振点・受振点の位置関係(ジオメトリー)を図化した。
○前処理
データ処理の前段階として、以下の波形処理を行った。
・TAR,AGC:反射波の減衰の補正、および深部からの微弱な反射波を自動的に増幅させる処理。
・バンドパスフィルター:周波数フィルターにより不要な信号を除去。
今回は10〜250Hzのフィルターを用いた。
・デコンボリューション :反射波の分解能を上げ多重反射波等を除去。
○CDP(共通反射点)編集
CDPごとに波形データを編集した。
○速度解析
定速度重合法により、反射波の速度を一定とし波形重合を行って最も反射位相の並びの
良い重合速度を決定した。
○NMO補正
波形データを重合するために、各データの発振点と受振点の走時の差を補正した。
○CDP重合
NMO補正後のすべてのCDPごとのデータを足し合わせた。
○マイグレーション
真の地下構造を表すために反射面の位置を移動させて実際の傾斜および位置を復元す処理を行った。
○深度変換
時間断面から重合速度をもとに深度断面に変換した。
得られた断面から反射面の連続性に着目して地層構造の解釈を行った。
図3−3−3 マルチチャンネル音波探査解析処理フロー