以下に主としてマイグレーション処理前の時間断面とマイグレーション処理後の深度断面を参考にして、各測線の解析断面に認められる記録の状態及び反射面の分布形状について述べる。
・a測線(図3−2−5、図3−2−6、図3−2−7、図3−2−8)
:S波探査(図3−2−9、図3−2−10、図3−2−11、図3−2−12)
a測線では、浅部の詳細な構造を把握するために、同一測線上で、バイブレーター震源によるP波探査と板たたき震源によるS波探査を行った。以下にそれぞれの解析結果を比較しながら述べる。
<記録の状態>
P波探査の時間断面において、全体的に反射面は明瞭で、140msまで明瞭な反射面が確認できる。一方、S波探査記録においては、200ms程度まで反射面を認める事ができる。
<反射面の分布形状>
P波探査のマイグレーション処理深度断面において、反射波は深度80m付近まで認められ、その分布形状は複雑である。距離0〜50m間の反射面は大局的には緩やかに東側に傾斜した形状を示すが、詳細にみると、距離25〜50m間は水平に近く、距離25mより東側ではやや大きな角度(約30度)で東側に傾斜している。一方、距離50mより西側では、大局的には(深度20m以深では)距離25mより東側にみられるようなやや大きな角度(約30度)で東側へ傾斜した形状を示すが、距離110m付近で大きく下に凸の形状を示している。また、距離50〜60m付近も反射波が乱れて連続性が悪くなっており、これらの箇所では断層などの不連続面が存在している可能性が高い。
S波探査のマイグレーション処理深度断面においては、深度20m程度まで明瞭な反射面が認められるが、それ以深はあまり明瞭な反射面は認められない。P波探査と比べて可探深度が浅いのは、発振の力が弱かったことと、深度20m以深において顕著なS波の速度層境界が無かったことが考えられる。
反射波をみると、S波探査で得られた反射波の波長は、得られた波の周波数が低いため、P波探査の反射波と同程度であった。しかし、5m以浅の深度においても、P波探査では不明瞭だった反射波が明瞭に認められ、距離100m付近で不連続になっている様子が認められた。
反射面の形状をP波探査断面と比較してみると、距離50mより東側ではよく似た形状を示し、水平から東側に傾斜した形状を示す。一方、距離50m以西では反射面の形状が異なる。これは、各反射面でのP波とS波の反射係数が異なるためであると考えられる。深度10m程度の水平な反射面ではS波の反射係数が大きく、その下位に分布する谷状の反射面ではP波の反射係数が大きいといったモデルを推定することができる。
・b測線(図3−2−13、図3−2−14、図3−2−15、図3−2−16)
<記録の状態>
時間断面において、140ms程度まで反射面が確認される。特に20msに水平に分布する反射面と40ms〜80msに傾斜して分布する反射面が顕著に認められる。
<反射面の分布形状>
マイグレーション処理深度断面において、明瞭な反射面の内、距離90mの深度5m、20m、25mに分布する反射面は、全体的には緩やかに東側に傾斜しているが、距離50m付近で傾斜がややきつくなっている。また、距離50mの深度5m付近に分布する反射面は、水平からやや東傾斜を示す。
・c測線(図3−2−17、図3−2−18、図3−2−19、図3−2−20)
<記録の状態>
時間断面をみると、全体的にS/Nが良好ではなく反射面が不鮮明である。その原因は発震を煉瓦状のタイルの上で行ったため、十分な振動が地盤へ伝播しなかったことによるものと考えられる。なお、本測線においては、S/Nを向上させるため、他の測線より多い回数(10回)スタックを行っている。
また、距離120mより西側はコンクリート製の構造物(地下歩道へ続くスロープ)であるため、その付近では反射面がより不鮮明となっている。
<反射面の分布形状>
マイグレーション処理深度断面において、距離20〜100mに認められる明瞭な反射面は、距離50mを境に傾斜が異なり、東側はやや東側に傾斜し、西側はやや西側に傾斜している。また、距離50m付近は、深度15mに分布する反射面を除いて、下位に認められる反射面が不連続となっている。また、距離100m付近も不鮮明ながら反射面が不連続になっており、これらの箇所では断層などの不連続面が存在する可能性がある。
・d測線(図3−2−21、図3−2−22、図3−2−23、図3−2−24)
<記録の状態>
時間断面において、距離120m付近より東側では深部(120ms付近)まで比較的明瞭な反射面が認められる。距離180mより西側では明瞭な反射面は60ms付近までしか認められない。この原因として、発振装置をおいた路面状態の違い(距離160m付近より西側はアスファルト路面であり、東側は土の路面)によると考えられ、直接地山に地震波を送った方が減衰が少ないと考えられる。
また、距離120m〜180m間はさらに反射面が不鮮明になっている。この範囲にノイズ源となるものは特に無いため、正確には原因が分からないが、地質構造自体に起因するものとも考えられる。
<反射面の分布形状>
マイグレーション処理深度断面において、明瞭に認められる反射面の内、例えば距離250mの深度20m付近に分布する反射面は、測線の西端から距離230m付近まではほぼ水平に分布し、さらに距離190m付近まで緩く東側に傾斜している。距離180m〜120m間では、急な角度で東側へ傾斜しており、反射面の乱れも著しい。
一方、距離120mより東側に認められる反射面は、距離120m〜70mの間ではほぼ水平に分布しているが、それより東側では下に凸状の形態を示している。
反射面の傾斜が変化する距離180m付近、反射面が乱れてその両側の反射面が不連続となっている距離120m付近は、断層などの不連続面が分布する可能性が高い。また、距離70m付近の反射面の形態が変わる箇所にも不連続面が分布する可能性がある。
・e測線(図3−2−25、図3−2−26、図3−2−27、図3−2−28)
<記録の状態>
時間断面において、距離150m〜200m付近の記録の乱れは、道路を横断するボックスカルバートの基礎の影響によるものである。その他の範囲では、やや不鮮明ではあるが、深部まで(100ms付近)反射面が認められる。
<反射面の分布形状>
マイグレーション処理深度断面において、明瞭に認められる反射面はほぼ水平に分布しているが、距離60m付近で不明瞭になり、その東側では若干東側に傾斜していることから、この付近に不連続面が分布する可能性がある。また、距離120m〜150m付近でも反射面の形状が変化しており不連続面が分布する可能性があるが、構造物の影響による可能性もある。