(2)探査結果

各測線における時間断面、マイグレーション処理時間断面、深度断面、マイグレーション処理深度断面を図3−1−6〜図3−1−9(A測線)、図3−1−10〜図3−1−13(B測線)、図3−1−14〜図3−1−17(C測線)、図3−1−18〜図3−1−21(D測線)、図3−1−22〜図3−1−25(E測線)に示す。

以下に主としてマイグレーション処理後の時間断面と深度断面を参考にして、各測線の解析断面に認められる記録の状態及び反射面の分布形状について述べる。

・A測線(図3−1−6、図3−1−7、図3−1−8、図3−1−9)

<記録の状態>

時間断面において、記録の状態は距離1100m付近を境に大きく異なる。距離 1100m付近より東側では比較的記録が良く明瞭な反射面が750ms付近まで認められる。

一方、距離1100m付近より西側では、記録の状態は悪く反射面がほとんど確認できない。ノイズの状況が他の測線と大きく異なるほどではないことから、原因の一つとして、地震波の減衰が大きい地盤であると考えられる。これは距離200〜1100m付近は台地状になっており、地下水位が低く、風化が進んだ地盤状況であると推測される。また、これに加えて、地層の傾斜が予想以上に大きく(ボーリングにより確認したところ40〜60度)、地表からの発振によっては反射波が観測されにくい状況であったことも原因の

一つであると考えられる。なお、図3−1−6〜図3−1−9については、測線の東端(測点1500m付近)が切れている。これは、測線の両端から20m遠方から起振させる必要があるのに対し、A測線の東端は測線端が橋梁であるため、測線の外側20m区間が確保できなかったことによる。

<反射面の分布形状>

深度断面において、距離1100mより東側ではほとんど水平に近いが、わずかに緩く西側に傾斜している。詳細にみると、その傾斜は深部の反射面ほど大きくなっている。例えば、距離1300mで深度330m付近に分布する反射面の平均傾斜角は約2度、深度650m付近に分布する反射面の平均傾斜角は約4度を示す。

一方、不鮮明ながら距離1100mより西側で認められる反射面は、距離600〜800m付近の深度200m以浅に分布するものである。この反射面は高角度(約45度)で東側に傾斜しているように見えるが、東側の明瞭な反射面との対応は不明である。しかしながら、距離1100m付近を境に東側と西側で反射面の傾斜が大きく異なることから、この間に何らかの不連続面が存在する可能性が高い。

また、距離0〜150mの深度200m以浅にも不鮮明ながら東側に高角度で傾斜した反射面が認められる。

・B測線(図3−1−10、図3−1−11、図3−1−12、図3−1−13)

<記録の状態>

時間断面において、距離400m付近より東側では、深部まで反射面が把握されており、800ms付近まで反射面が認められる。一方、距離400mより西側では、400ms以深でほとんど反射面が確認できなくなっている。この原因として、現場におけるノイズ状態などに大きな違いがないことから、ひとつは地盤状況の違いと考えられるが、もうひとつは探査の際のジオメトリー(発振点と受振点の配置)に関係すると考えられ、距離0〜475mは受振器固定のため表面波によって深部の反射波が隠されている可能性もある。

<反射面の分布形状>

深度断面において、深度400m以浅では、明瞭に認められる反射面が距離200m付近より東側ではほぼ水平か若干東側に傾斜し、西側では逆に若干西側に傾斜している。

一方、深度400m以深では、距離400mより東側の明瞭な反射面は、多少の起伏はあるものの全体的には緩やかに東側に傾斜し、なおかつ深度800m付近に認められる反射面は、それ以浅に認められる反射面より傾斜がきつくなっている。さらに、距離400mより西側では、不鮮明ではあるが上に凸状に波打った形に反射面が分布し、なおかつ深部に認められる反射面の変化量が大きくなっているように見える。

・C測線(図3−1−14、図3−1−15、図3−1−16、図3−1−17)

<記録の状態>

時間断面において、距離1200mより東側では深部まで記録が良く、900ms程度まで反射波が明瞭に確認できる。また、距離260〜1100m間は、700m付近の400ms以浅で一部不明瞭である他は600ms程度まで明瞭な反射波が確認される。

一方、距離0〜260m、1100〜1200m間では、表層付近からほとんど明瞭な反射波が見えない。その理由として、地震波が伝わりにくい地盤が分布していること、あるいは反射面の急変点であることから地表において反射波が観測されにくい地点であったと考えられる。また、距離0〜140m間は測線上に車が多かったことによりS/N比が悪かったこと及び距離1070m付近を交通量の多い道路が横切っているため、発振点と受振点を連続的に設置できなかったことなどが考えられる。

<反射面の分布形状>

深度断面において、距離1200mより東側に認められる明瞭な反射面は、浅部から深部までほぼ水平に分布している。ほとんどの反射面は深度700m以浅に認められるが、深度920m付近にも明瞭な反射面が認められる。

一方、距離1100mより西側では、反射面は傾斜し、その状況も場所によって変化している。距離800m〜1100m付近では、反射面は東側にやや急な角度で傾斜している。それは深度100m以浅に認められる反射波も不明瞭ながら同様な傾向を示している。しかし、距離1100m〜1200m付近で反射面が不明瞭になっているため、東側の反射面との対応は難しい。

距離260m〜800m付近では、反射面はほぼ水平から緩やかに西側に傾斜している。またその傾斜は、深部に認められる反射面ほど傾斜が急になる傾向がある。また、さらに西側では逆に東側に傾斜(反射面が浅くなっていく)していき、全体的には距離250m付近を中心とする下に凸状の形状を示している。

・D測線(図3−1−18、図3−1−19、図3−1−20、図3−1−21)

<記録の状態>

時間断面において、全体的には600ms程度まで反射面が把握されている。このうち例えば距離500mで150ms付近に分布する反射面は、距離750m付近で不鮮明になっており、また500ms付近に分布する反射面は、距離700m付近より東側で不鮮明になっている。これらの原因としてこの区間が受振器固定区間であることに加えて、測線上を交通量の多い道路や鉄道(名鉄線)が横切っているため、発振点と受振点を連続的に設置できなかったことによるものと考えられる。

<反射面の分布形状>

深度断面において明瞭に認められる反射面は、深度100m〜300m間と深度500m付近に分布している。反射面は全体的には緩やかに東側に傾斜しているが、距離700m付近より東側ではさらに傾斜が緩やかになりほとんど水平に近くなっている。また、距離250mで深度100m付近に分布する反射面は、距離250m付近で反射面が上方に凸状を示しているが、深部の反射面が不明瞭であることから地下深部に起因するものであるかどうかは不明確である。

 さらに、距離750m付近で反射面が不連続になっているが、その両側で反射面の深度がほとんど変わらないことから断層などの不連続部が存在する可能性は低いと考えられ、もしあるとしてもその変位量は少ない(深度500m付近の反射面で10〜20m程度)と推察される。

・E測線(図3−1−22、図3−1−23、図3−1−24、図3−1−25)

<記録の状態>

時間断面において、距離270m付近より東側では比較的記録が良く明瞭な反射面が 600ms付近まで認められる。一方、距離270m付近より西側では、記録の状態は悪く反射面がほとんど確認できない。この原因の一つとして、地震波の減衰が大きい地盤であると考えられる。これは距離270m付近より西側は台地状になっており、地下水位が低く、風化が進んだ地盤状況であると推測される。これに加えて、受振点固定区間であることと道路下の埋設管が多いため十分な発振ができなかったことなどが挙げられる。

<反射面の分布形状>

深度断面において比較的明瞭に認められる反射面は、距離270mより東側の深度 150m以浅と距離150mより東側の深度500m付近に分布している。このうち深度150m以浅に分布する反射面は、ほぼ水平に分布している。

一方、深度500m付近に分布する反射面は、連続しており、全体が緩く西側に傾斜している。