反射法弾性波探査は、地表で人工的に地震波を発生させ、地下の地層境界で反射して地表に戻ってくる反射波をとらえることにより、地下の地質状況を探査する方法である。地表からの探査により、地下の地質構造の視覚的なイメージを得ることができる。その中でも特に比較的浅部(地下数百m以浅)を対象とする探査が浅層反射法弾性波探査である。
本調査では、断層を横切ると予測される測線上において、断層の通過位置、変位量、深度数百mまでの地質構造を明らかにすることを目的として探査を行った。
2)測線の位置及び測線数量
測線位置を、図3−1−1、図3−1−2、図3−1−3、図3−1−4、図3−1−5に示し、数量一覧を表3−1−1に示す。
表3−1−1 浅層反射法弾性波探査数量表
本業務において、測線選定において考慮した点を以下に述べる。
・方向:対象とする断層をできるだけ直交方向に横断する方向とする。
・長さ:探査深度が500m程度であるため、少なくともそれ以上の測線長が必要となる。また、測線が極端に曲がっていると、測線直下の状況が反映されない可能性があることから、できるだけ直線であることが望ましい。したがって、対象とする断層の両側に、十分な長さのできる限り直線状の区間が必要である。
・道路幅:発振源として、重錘落下装置を搭載した3tトラックを使用するため、少なくとも発振車が入れる程度の幅が必要である。また、通行止めできない道路では、さらに他の車が通行できる幅が必要となる。
・ノイズ:探査対象とする層からの反射波は微小であるため、S/N比の良い記録を取る必要がある。そのため、周辺のノイズはできるだけ少ない方がよい。街中におけるノイズ源としては、車・電車などの交通振動、工場、工事による振動、電灯線や高圧線などが原因となる電気ノイズなどが挙げられる。したがって、これらのノイズ源ができるだけ少ない場所を選定する。
・その他:発振により少なからず振動と騒音が発生するため、測線近傍にできるだけ人家が少ないところを選ぶ。
表3−1−2 に浅層反射法探査測線の選定理由を一覧にして示すとともに、以下に各測線状況について述べる。
・A測線
加木屋断層の北部の断層位置及び地質構造を確認するために設定した測線である。
測線は、東海市の大池公園の北側に位置し、ほぼ東西方向の測線である。片側2車線の舗装道路で、交通量は多い。特に県道及び市道との交差点付近は交通量が多く、発振点及び受振点が設定できなかった。測線前半は主として公園、後半は商店が多い。測線上における地形の起伏がやや大きい(比高差約25m)。また、道路下に埋設管が多く、発振には注意を要した。
・B測線
高根山撓曲と大高−大府断層の交差部の高根山撓曲の位置及び地質構造を確認するために設定した測線である。
測線は、大府市のJR大府駅の東側に位置し、ほぼ北西ー南東方向の測線である。片側1車線の舗装道路で、交差点付近の交通量は多く、測線中央部に位置する交差点では発振点及び受振点が設定できなかった。測線後半には工場がある。
・C測線
加木屋断層の南部の断層位置及び地質構造を確認するために設定した測線である。
測線は、阿久比町の福山川左岸に位置し、ほぼ東西方向の測線である。片側1車線の舗装道路(一部センターラインなし)で、全体的には交通量は比較的少ないが、一部で交通量が多かった。測線は、やや屈曲し、一部狭く、周辺に人家が多い。また、県道と交差する交差点付近では発振点及び受振点が設定できなかった。
・D測線
阿久比撓曲の南部の沖積層を変位させている断層の位置や地質構造を確認するために設定した測線である。
半田市の神戸川右岸に位置し、ほぼ東西方向の測線である。片側1車線の舗装道路で、一部未舗装路がある。測線上はほとんど交通量がないが、隣接する道路及び交差点付近の交通量が多い。また、測線が鉄道(名鉄線)、国道247号線を横切っており、それらの区間では発振点及び受振点が設定できなかった。測線後半に人家、路上駐車車両が多く、発振に注意を要した。
・E測線
高浜撓曲崖を形成する断層の位置や地質構造を確認するために設定した測線である。
高浜市の名鉄高浜港駅の東側に位置し、稗田川を横断するほぼ東西方向の測線である。片側1車線の舗装道路で、一部離合不可能な道幅となる。測線上は比較的交通量が少ない。また、起点から約200mの区間では人家、埋設管が多く、発振に注意を要した。稗田川及び市道との交差点付近では発振点及び受振点が設定できなかった。
3)探査の概要
浅層反射法弾性波探査では、地表から深さ約500m程度を対象にして探査を行った。探査にはP波を使用し、観測は測線方向の直線上に発振点と受振点を設け、かつ発振点を最小オフセット距離(発振点−受振点距離)を20mとして測線の端に置く方法(インラインエンドオンオフセット展開)を基本とし、測線端では受振器固定とした。各測線における受振器固定区間は、A、B、C、E測線では−5〜470m、D測線では730〜 1200mである。
表3−1−3 に探査の仕様を示す。本探査においては、発振装置として重錘落下型震源装置を用いた。この震源は、約400kgの重錘を油圧装置を用いて約1〜3mつり上げた後に、これを地面上に落下させることによって、地震波を発生させるものである。受振器としては固有周波数10Hz、12連のジオフォンストリングスを用いた。原則としていずれの測線も発振点間隔は10m、受振点間隔は5mである。
また、データ収録装置としてはOYO Geospace社製のDAS−1 を用いた96チャンネルのシステムを使用した。DAS−1は、シグマデルタ方式のA/D変換器を搭載した地震探査装置で、24ビットという高い分解能を有する。探査記録のサンプリング間隔はいずれも1msであり、記録長は、2secである。また、現場における周波数のローカットは3Hzとしている。
各発振点におけるショット記録は、通常、現場におけるスタック(垂直重合)により得るが、本現場の場合は、各測線とも交通振動等のノイズが多かったため、そのままスタックした場合、データの品質が低下する恐れがあったため、現場ではスタックせず、室内に戻ってから、ノイズ箇所をできるだけ削除した記録を作成し、スタックを行った。なお、各測線の垂直重合数は、A測線、B測線、D測線が8、C測線が6〜8、E測線が4または8である。
本探査の観測に使用した機器の一覧を表3−1−4にまとめる。
また、探査方法と解析方法の詳細は、別冊資料に示す。
表3−1−3 浅層反射法探査仕様
表3−1−4 浅層反射法弾性波探査使用機器一覧