地表では、常滑層群を切断する断層は、東西方向のものが殆どで、断層のズレも大きくはなく、撓曲軸と同方向の南北方向の断層は踏査では認められなかった。
空中写真の判読や浅層反射法探査では撓曲の東側で多くの活断層が検出できた。この位置には、段丘面や沖積面が発達し、常滑層群が直接露出することが無いため、地表踏査では発見できなかったと考えられ、これらの断層は、撓曲構造に伴い形成されたと考えられる。
各断層沿いの地表踏査の結果は、付図4(付図4−1、付図4−2)の地質平面図(S=1/5,000)及び付図7の地質断面図に示した。
また、写真14、写真15、写真16に常滑層群の小断層の露頭写真を示した。
2)段丘堆積物の断層
@大高−大府撓曲沿いの断層
常滑層群の走向・傾斜や大高、横須賀火山灰の分布位置を確認し、常滑層群の撓曲及び背斜軸・向斜軸の分布位置を明らかにした。地層の傾斜が両側に傾く背斜軸は、大府市共和から、東浦町森岡を経て緒川に至る。この背斜軸の東側の常滑層群は、東側に急傾斜する。
大高−大府撓曲の東側に中位段丘、低位段丘が分布する。特に東浦町では、段丘を横断する活断層が空中写真で観察され、これらの変位地形を現地で確認した。
東浦町森岡では、沖積面(扇状地)を切ると考えられる段差1mの断層崖を確認した(現在段々畑として断層崖は人工的に改変を受けている)。
緒川地区から石浜地区にかけては、中位段丘が発達する。この段丘を横断して南北に連続する崖が見られる。この中位段丘面は現在、宅地となり、段丘堆積物の露頭は見られず、崖の上と下の段丘堆積層の対比は行われていないが、地質平面図に示したように崖が直線的に連続し、崖の勾配等もほぼ同一であるため,中位段丘面が活断層で変位し、断層崖が出来たと考えられる。
A加木屋撓曲沿いの断層
天神、横須賀、岡田、佐布里火山灰等の分布位置を確認し、地質構造が明らかになった。常滑層群の加木屋撓曲の南部は一旦切れるが、阿久比川を横断して、阿久比川の東側の半田市の宮津団地に延びると考えられる。地形上も尾根が阿久比川を横断して連続する。
撓曲構造の東側の丘陵と段丘の境界に見られる活断地形は、断続しながら、ほぼ阿久比川の右岸を南下して阿久比撓曲の方向に延びる。
B阿久比撓曲沿いの断層
横須賀、佐布里火山灰の分布を明らかにし、地質構造を把握した。特に阿久比役場の西側は、圃場整備の造成中で、のり面の全面が観察できた。ここでは南北に走る向斜軸が観察でき横須賀火山灰等も確認できた。都市圏活断層図では、この位置に活断層が推定していたが、現地では常滑層群を切る断層は分布していない。そのため、新しい活断層も分布しないと考えられる。すなわち、この位置まで活断層が延びず、北側で一旦途絶えて、更に南に延びていると考えられる。
阿久比撓曲の南側には阿久比川に沿って活断層が認められる。
C平井撓曲沿いの断層
東谷、佐布里火山灰が背斜軸の両翼で確認でき、平井撓曲の存在を把握した。活断層は特に現地で確認できなかった。
D半田池撓曲沿いの断層
横須賀火山灰を向斜軸の両翼で確認できた。また尾根部には武豊層が確認できた。即ち、半田池撓曲部は、全体に向斜構造を示し、尾根に武豊層を乗せていることから地質構造的にも平井撓曲部より隆起量が少ないと考えられる。
E高浜撓曲崖沿いの断層
常滑層群は地表には分布しない。中位段丘である碧海面が約高さ5mの崖でズレが見られる。
3)活断層の連続性と断層名の提唱
ここでは、撓曲沿いに段丘面や沖積面をきる断層が確認できたことから、断層の連続性を述べ、新しい断層名を提唱する。図2−3−8に調査前と調査後の断層位置を図示した。
@大高−高浜断層
大高−大府撓曲の東側にほぼ沿って分布する1条〜3条の活断層よりなる。この断層は、衣浦港を横断し、高浜の撓曲崖に連続する可能性がある。ここでは大高−高浜断層と仮称する。
A加木屋−成岩断層
加木屋撓曲の東側に沿って活断層が分布する。活断層の連続性は大高−高浜断層ほど連続性が良好ではない。この系列の活断層は阿久比川に沿って阿久比撓曲を経て半田市の成岩地区迄断続して追跡出来る。加木屋層の構造や活断層の連続性から考え、この断層は大田川から阿久比川に沿って南北に連なると考えられ、加木屋−成岩断層と仮称する。
B阿久比東部撓曲
加木屋撓曲の南端部に連続性の悪い活断層が数条認められ、別の断層として取り扱い 阿久比東部撓曲と仮称する。
図2−3−8 調査前・後の断層位置と提唱断層名