(2)地震関連資料

1)地震記録

東海地方はしばしば大型の被害地震が発生している。マグニチュードM8級の大型地震としては、濃尾地震(1891) 、東南海地震(1944)がある。明治以前では遠州灘沖合の地震(1498)、天正地震(1586), 安政南海地震(1854)等がある。このほかマグにチュードM7級の地震は、計15ヶ位発生している(図1−2−1参照)。

東海地方では最近の地震は濃尾地震の震源域の周辺部に順次広がっていって発生しているようである。そして各々の余震域を大体避けるようにして発生している。1991年の濃尾地震及び1948年の福井地震、1945年の三河地震は同一構造線に沿ったものであると考えられる(飯田1972)。このような地震に伴う断層系は、地殻変動連続観測より求めた永年的変動ないし地質断層系とも合致している。このような観点からみるとこの構造線(福井断層、根尾谷断層、岐阜−一宮線、大高−大府断層、深溝断層など)に沿って発生した地震は、有史以来20数個に達する(図1−2−2参照、飯田1972)。

震央が知多半島周辺の地震としては、1586年、1666年、1894年の地震が挙げられる。1586年の地震は、震央が白川断層あるいは、伊勢湾とする説(津波が発生)がある。また二個の地震が続発したとする説があり、震央位置については不明な点がある。1666年の地震では知多半島に津波が来襲したとされる。1894年の地震は、濃尾地震の余震と考えられている。現在のところ明瞭に知多半島の活断層の活動と結びつく歴史地震は見られない。

1983年〜1989年の深度20km以浅のマグニチュードM2.0以上の地震記録をみると福井付近、知多北部の福井断層、深溝断層沿いに地震が多く、根尾谷断層、岐阜−一宮線沿いには地震は少ない(図1−2−4参照)。また、1983年〜1994年の知多半島周辺の詳細な地震記録(図1−2−3参照)では、三河地震の余震(地震発生の時系列変化は、金井 清の余震の減衰曲線にのる)と考えられる横須賀断層〜深溝断層に沿ってマグニチュード1〜3の地震が深さ30km以浅で発生している。常滑市、阿久比町、半田市周辺に深度10〜30kmにマグニチュード1〜3の地震が集中して発生している。このゾーンの地震は、琵琶湖東岸から伊勢湾に続く地震群の南端部に位置している。琵琶湖東岸〜伊勢湾の地震群の地域は、過去に大きな地震の記録のない地域である。この地震群付近には一志断層、養老断層、伊勢湾断層等が分布する。知多半島の地震密集発生地域には、阿久比撓曲、平井撓曲、半田池撓曲、千代ヶ岳撓曲が分布するが、阿久比撓曲や千代ヶ岳撓曲沿いには、過去数10万年以降に活動したと考えられる活断層が推定されているが、平井撓曲や半田池撓曲付近にはそのような活断層(東海層群が撓曲しているため活断層の可能性が高いが数10万年以降活動した証拠が無い)が確認されていないが、この知多半島中央部の地震の密集域は活断層に何らか関係したものと考えられる。

2)液状化記録

碧海郡や西尾市は三河地震時に震度6〜7の範囲で多くの噴砂現象がみられた(図1−2−5図1−2−6参照)。これらの地域は、横須賀断層や高浜撓曲崖(断層)に近接していることと、沖積層の緩い砂層が分布していることに伴うものであろう。  愛知県では、一宮周辺の遺跡では遺跡調査に伴い噴砂跡の発見(濃尾地震、東南海地震、三河地震等に伴うもの)されているが、今回の調査区域周辺では発見されていない(図1−2−7、表1−2−3参照)。