各反射面及びその間の反射パターンについて以下にまとめる。
・反射面B〜Dについては、上位の地層が各反射面に傾斜を持ちながらぶつかって(ア バット)おり、不整合面と考えられる。
・A〜C間は比較的強振幅で連続性の良い反射面が多数存在する区間である。一方、C〜D間はこれと対照的に反射波の振幅は全般に弱く、かつ連続性にも乏しい陸性の堆積環境を示唆する反射パターンを示す。
・A〜Dの各反射面は深いもの程その傾斜を大きくしながら西に緩やかに傾斜している。
・反射面A、Bについては周辺の地下水位観測井S1〜S3(位置は図3−48)の層序から、それぞれ熱田層上面、海部累層上面に対応しているものとした。A〜C間の反射パターンは海成層と陸成層の互層パターンを示している。一方、C〜D間は陸成を示唆する反射パターンを示しており、東海層群に対応しているものとした。D〜E間は非常に連続性の良い成層構造を示しており、この上位の地層と堆積環境が著しく異なっていたと考えられる。さらに、この区間の区間速度は約3000m/s前後を示しており、中京圏基盤構造研究グループ(1980,1981)による屈折法から報告されている3km/s層に対応し、中新統の速度として妥当である。これらから、区間D〜 Eは中新統に相当すると解釈した。
・最下位の反射面Eは測線東側で非常に強振幅を示し、起伏はあるものの連続性は良い。一方、測線西側は東側に比べて振幅はかなり弱く一部で不鮮明となっているが、他の反射波との識別は可能である。この反射面は上位の反射面に比べて起伏に富むものの、全体的には一定傾斜を示している。さらに、この反射面以深では有意な反射波は認められない。LINE−1の近傍にある温泉ボーリング(位置は図3−48)で確認されている基盤は以下の通りである。
坑井名 基盤深度 坑底深度 基盤の岩質
D1 880m 1000m 一部粘板岩を挟むチャート
D2 414m 1186m 同 上
反射面Eの反射パターン及び上記データから、Eは中・古生層の基盤の上面に対応しているものと考えられる。
・CDP650〜850の区間(約1000m)のEは高まりを持っており、かつ、その頂部で反射波が不鮮明になる。この高まりは比高100m程度である。その両翼では幾つかの逆断層が認められるが、反射面Dまでは達していない。基盤の上位の地層は、この高まりを境界としてその傾斜を変えるものの大きな影響は受けていないこと、高まりに対して上位の地層がアバットしているように見えること、さらに、これらの地層の区間速度にも変化はないこと、反射パターンも特に乱れた様子はないこと等から考えて、基盤の上位の地層の堆積時にはこの高まりは既に存在し、この高まりを埋め立てるように堆積したものと推定される。なお、これ程明瞭ではないが、同様な個所がCDP130付近にも認められる。
・岐阜−一宮線付近の反射面AはCDP890〜1030の約700mの区間で不明瞭になっている。
この区間は盆状の形態を示し、この内部は反射波が乱れた状態になっているのが特徴的である。この区間の両端には下位の地層に続くような明瞭な地層の不連続は認められないため、旧河床を示すものと考えられる。
岐阜−一宮線の推定根拠の一つとして、東海道本線東側のボーリングから熱田層中で5m程度の地層の食い違いが認められているが、この位置は丁度上記の旧河床の東縁にあたっており、断層以外の地質要因も十分考えられる。
LINE−2についてもLINE−1と同様の解析を行った。結果を図3−47−2に示す。
・LINE−1に比べて傾斜は小さいものの各反射面は西に緩やかに傾斜し、西ほどその層厚を増している。
・基盤上面についてもLINE−1と同様に、CDP100〜350(1.25km)間で比高100m程度の高まりが存在し、その頂部で反射波が不鮮明になっている。東海層群上面の反射面は頂部付近を境としてその傾斜を西側で強くするものの、基盤形状の大きな影響は受けていないように見える。ただし、LINE−1に比べれば、この高まり付近の中新統の反射波は若干乱れているように見える。
・東海層群の層厚はLINE−1に比べてかなり薄い。
・CDP200〜360(800m)及び20〜200(900m)間の反射面AからBにかけては、下に凸な二つの弧状をなす構造が認められる。これらの区間の深度20m以浅は、図3−41−2に示す表層構造図でも二つの盆状構造を示すゾーンに対応しており、その形状から旧河床の可能性が高い。
・さらに、この測線では、海部累層あるいは第三礫層以浅の区間では断層を示唆する地層の不連続な箇所がいくつか認められる。ただし、その落差は最大でも5m以下で、累積性を示しておらず、東海層群上面の反射面まで達しているようには見えない。