現場で磁気テープに収録されたデータは、IBM RS6000 SPスーパーコンピューターシステムと反射法解析システムSuperX(地球科学総合研究所)を用い、図3−38に示すフローチャートに従って処理・解析を実施した。
1)フォーマット変換及び編集
フィールドテープに記録されたデータのフォーマット変換を行うとともに不良トレースを除去した。
2)トレースヘッダーへの測線情報の入力
各トレースデータに対し、発震点及び受振点の座標、標高値、オフセット距離、基準面標高値等の測線情報を入力した。図3−39−1、図3−39−2には25,000分の1の地形図上に表示した発震点及び受振点位置を図3−40−1、図3−40−2にはCDP位置を表示した測線図を示す。
3)屈折波初動解析
改良型タイムターム法による屈折初動解析を行い表層構造を求めた。図3−41−1、図3−41−2には表層速度構造図とタイムターム値を示した。表層速度はショット記録上での初動の見掛け速度から800m/secとした。
4)初動ミュート
強振幅の屈折波初動部分を抑制する目的で屈折初動部をミュートした。
5)最小位相変換
後述するデコンボリューション処理には最小位相の前提が必要である。バイブレータのスウィープ波形はゼロ位相であるため最小位相変換を実施した。
6)振幅補償
弾性波の幾何減衰、多層構造による透過損失及び非弾性効果による減衰等を補償することを目的として、ウィンドウ長600msecのAGC(Automatic Gain Control)を適用した。
7)速度フィルター
LINE−1においてはチューブウェーブ(見掛け速度約1000m/sec)を抑制することを目的として速度フィルターを適用した。尚、LINE−2については、顕著な線形ノイズが認められないため、適用を見合わせた。
8)デコンボリューション
ノイズである多重反射波の除去と分解能向上を目的として波形圧縮操作であるホワイトニングデコンボリューションを行った。
9)共通通反射点編集
反射点位置は、測線の屈曲及び発震点のT−オフセットによって平面的に分布する。反射点の集中した部分を通る重合測線を設定し、重合測線に沿った5m区間内に存在する反射点データをCDPアンサンブルとして編集する操作を実施した。
10)浮動基準面に対する静補正
正しい地下断面を得るには、標高や表層厚の水平変化を補正する必要があり、この補正を静補正と呼ぶ。この補正量は、前述した屈折初動解析結果を用いて計算した。補正速度は、表層基底層速度(2000m/sec)とした。基準面(Datum Plane)は平均海水面に設定し、大きい標高補正量の適用による重合効果への悪影響を回避するため、各CDPアンサンブルの平均標高(Floating Datum Plane)を求め、この平均標高との標高差のみを補正した。
11)速度解析
定速度重合法による速度解析を250m間隔で実施した。図3−42に速度解析の一例を、図3−43−1、図3−43−2に速度プロファイルを示す。
12)NMO補正
速度解析によって求められた重合速度により、各トレ−スデータを垂直往復走時に変換するNMO補正を実施した。
13)ミュート
NMO補正に伴う波形の伸長及び受振−発震点間距離の大きいトレースに残留する屈折波初動部分を抑制する目的でミュートを適用した。
14)残差静補正
NMO補正後のCDPアンサンブルを入力として、静補正で補正しきれないトレース間の微小な時間ズレを統計的に求め、これを補正した。
15)共通反射点重合
標準30重合の共通反射点重合を実施した。
16)重合後デコンボリューション
残存する多重反射波の抑制を目的として、予測距離24msecのプレディクティブデコンボリューションを適用した。
17)周波数−空間領域予測フィルター
ランダムノイズを抑制し、相対的にS/Nを向上させるF−X予測フィルター処理を実施した。
18)帯域通過フィルター
反射波の有効周波数帯域をテストにより検討し、ランダムノイズを除去する以下の帯域通過フィルターを適用した。
0msec 16〜70Hz
250msec 16〜60Hz
500msec 14〜55Hz
1000msec 12〜45Hz
5000msec 12〜30Hz
19)基準面補正
平均標高から基準面(平均海水面)への時間補正を行った。
20)時間マイグレーション
時間断面上の反射点位置を実際の位置に移動させ、回折波を回折点に復元することを目的として、陰解法による45度差分方程式時間マイグレーションを適用した。マイグレーション速度は重合速度の95〜70%を用いた。
21)深度変換
時間マイグレーション断面に対して、重合速度を平滑化した速度から計算される平均速度を用いて深度変換を実施した。サンプリング間隔は2mとした。
22)最終断面図表示
重合記録(図3−44−1、図3−44−2)、時間マイグレーション記録(図3−45−1、図3−45−2)及び深度記録(図3−46−1、図3−46−2)を以下のスケールで表示した。
水平スケール 時間/深度スケール 表示記録長
重合記録 1:20,000 10cm/sec 1.7sec
時間マイグレーション 1:20,000 10cm/sec 1.7sec
深度 1:20,000 1:12,500 2000m
処理長はすべて5秒としたが、1.7sec以深には有意な反射イベントが認められないため表示記録長は1.7secとした。同様に深度記録は深度2000mまでを表示した。