(2)最近の新しい資料による対象断層に対する検討

前項では調査対象断層の推定根拠及び性状を中心に既存文献を整理した。ここでは最近の新しい資料を用いて対象断層について検討する。

図3−25−1は濃尾平野周辺で1975年〜1996年に発生した微小地震の震源分布図(総理府地震調査研究推進本部地震調査委員会編(1997))である。微小地震集中域は、養老−桑名−四日市断層系及び伊勢湾断層に対応する地域、岐阜−江南−小牧の尾張丘陵下及び濃尾地震時の第1震裂波動線の位置に相当する関市西方−犬山にかけての区間の二つに大別され、巨視的にみればいずれも北西−南東方向に分布している。対象断層沿いは、津島市付近を除きいずれも空白域である。

図3−25−2は、国土地理院(1980,1982)による濃尾平野周辺域での既設の一・二等三角点の1886年と1976年の測量結果との比較から推定された水平地殻歪である。この歪図の右下部では1945年に三河地(M=7.1)が起こっており、この近傍では大きな水平歪を示しているのが特徴的である。これ以外では、養老断層に沿ってやや大きな歪を示し、この東方の平野部では東西方向の歪が卓越するものの、濃尾地震に対応する顕著な変化は認められない。

・長良川河口部で水資源開発公団(1994)により実施された大深度反射法調査測線の一部は弥富線と長良川で交差している。この測線においては、弥富線推定位置だけでなく測線全域で浅部から基盤に至るまで断層の兆候は認められない。基盤は長良川沿いに150m程度の起伏を示すものの比較的緩やかに変化している。これから判断して、この付近で東西性の基盤まで達する構造線の可能性はかなり低いものと考えられ、たとえ弥富線が存在したとしても長良川までは達していない。

・須貝ほか(1998)により岐阜県海津町の長良川から揖斐川に至る区間で大深度反射法調査が実施され(図3−26)、揖斐川以東では一部地層の傾斜変化は認められるものの、浅部から基盤に至るまで断層の兆候は認められず、大藪−津島線に対応した構造は認められないことが報告されている。

・大垣−今尾線についても、須貝ほか(1998)は、揖斐川以東で反射記録上には断層の兆候は認められないことから、新編日本の活断層に示された大垣−今尾線に対応した構造は認められないとした。さらに、揖斐川東岸より西側では深部まで達していると見られる断層が存在しているが、これらの断層の東端部は杉山ほか(1994)により東落ちの養老断層の東端部として確認されているものであることを指摘している。